椰月美智子『14歳の水平線』は2016年にたくさんの学校で出題されました。
- 筑波大学付属中
- 浅野中
- ラ・サール中 など
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あらすじ
中学2年生の加奈太は、思春期真っ只中。両親が離婚してから父親の征人と暮らしているのですが、素直になれず気持ちがすれ違っています。
そんな加奈太・征人親子が、征人の故郷である天徳島で過ごす夏休みの物語です。
天徳島は「神様の島」と言われる沖縄の離島。古くから伝わる風習を守りながら暮らしている、美しく神秘的な島です。
一方で、人口減少が深刻な問題となっています。
夏休みに外部の子どもたちを募って行われるキャンプに参加することになった14歳の加奈太の物語と、かつて14歳だった征人が天徳島で暮らしていた頃の物語が並行して進みます。
加奈太の参加するキャンプでは、6人のメンバーが3対3に分かれていがみ合う展開になってしまいます。共に過ごす中で変わっていく関係を、爽やかに描いています。
征人の物語は、幼馴染しかいない島に外部からきた転校生との友情、さらに征人の父親が海で遭難していまうというドラマチックな展開です。
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作者について
1970年生まれ。神奈川県在住の小説家です。
2002年『十二歳』で講談社児童文学新人賞を受賞してデビュー。
『しずかな日々』では野間児童文芸賞と坪田譲二文学賞をダブル受賞。
主な受賞歴は児童文学ですが、大人の小説も書かれています。
その他の作品は、『消えてなくなっても』『るり姉』『明日の食卓』など。
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感想
沖縄の離島を舞台にした美しい物語。一場面一場面が絵になっていて映画のような小説だと思いました。
加奈太の話は、ミステリアスな島での冒険を通して、思春期特有の悩みやイライラやぶつかり合い~友情を築くまでの爽やかな展開ですが、ありがちと言えばありがち。
ものすごいケンカしてたくせに、ケロッと恥ずかしいセリフを言える14歳男子の素直さがまぶしいです。
征人の話は、「神様の島」を守りたいという義務感と、古い因習にとらわれた島の閉塞感という島民たちのバックグラウンドが色濃く、少年たちの物語にもやりようのない切なさを感じました。
伝説も風習も、加奈太の物語よりずっと身近なものです。
漁師をしている征人の父親が漁から戻らず6日がたった時、征人は転校生のタオ一緒に伝説の化け物ドゥヤーギーに会いにいき、父親をよみがえらせてもらおうとします。
14歳の少年がそのような伝説にすがってまで父親を取り戻そうとする姿が、健気で涙が止まりませんでした。
征人の一番大切なものと引き換えに、父親は戻ってくるのでしょうか。あるいは、島の古い伝説も因習も、信じるに値するものではないのかーー。
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入試問題では
入試問題で使われたのは、征人の父親の安否をめぐるシリアスな部分ではありません。(そんなところが出たら受験生がテスト中に泣いてしまいますよね。)
出題されたのは「~せずにはいられない気持ち」や「もやもやする気持ち」になったのはどうしてか、などもっと日常的な場面での登場人物の気持ちについてです。
おそらく登場人物自身もわかっていない微妙な気持ちを、前後の文脈から読み取らなくてはなりません。なんとなくはわかっても、言葉にするのは難しいですね。
受験勉強に関係なく、子どもに読ませたい大好きな作品となりました(*^^*)。
14歳の水平線(amazon)
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