重松清は、中学入試では定番中の定番の作家です。
『きみの友だち 』もたくさんの学校で出題されています。
- 芝浦工業大学
- 聖徳大学付属女子
- 郁文館
- 大宮開成
- 日本大学第一
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あらすじ
小学5年生の恵美は、雨の日の下校中、友人たちを傘に入れてあげたことで道路に飛び出してしまい交通事故に遭ってしまいます。そして複雑骨折した左足の膝は完治することはなく、松葉杖がなくては歩けなくなってしまいます。
そのことで友人たちをおもいっきり責めてしまった恵美は、歩けなくなったうえに友だちもいなくなってしまい孤立します。
そんな時に、病気がちで同じくクラスで浮いていた由香と親友になります。
もうひとりの主人公は、恵美の弟のブン。彼は姉とは対照的に勉強もスポーツもできるクラスのリーダー的存在です。
姉弟とその周りの友人たち一人ずつを主人公にした短編のなかで、恵美と由香の関係・ブンの成長を描いていきます。
すべての物語は主人公に「きみ」と呼びかける人物の視点で描かれていますが、その人物はいったい何者なのかー。
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作者について
重松清は1963年、岡山県生まれの小説家です。
名前から厳めしいおじさんを想像していましたが、写真を拝見するととても優しそうで意外でした。作品通りの温かい印象です。
受賞歴も多く、2000年に『ビタミンF』で直木賞を受賞しています。
どこにでもいそうな人物の誰にでも起こりそうな出来事を題材にしていることで、感情移入しやすい作風となっています。
作品はとても多く、『きみの友だち 』以外にも『くちぶえ番長 』『きよしこ 』『小学五年生 』『青い鳥 』『その日のまえに』など小学生に読ませたい作品がたくさんあります。
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感想
まず驚いたことは、読んだ長女が泣いたことです。あまり泣かない子なので・・。(わたしはほとんど全ての本で涙する涙腺最弱母ですが。)
読み終わった後も、何度もくり返し読んでいました。
どこで泣いたの?と不躾な質問をしてみたところ、由香の病気に関するところでした(詳しくは書きませんが)。
この物語は、足の不自由な主人公と病気の友だちというどこにでもいるとは思えない人物が主人公になっているにもかかわらず、誰もが共感してしまう内容です。
作中で「はじく」と表現されている仲間はずれは、健康かどうかにかかわらず誰でも経験することですが、極端な設定にすることで、状況や心情がかえってわかりやすくなっています。
「みんな」は友だちではない。「みんな」のことを気にしているうちはほんとうの友だちはできないし、幸せになれない。
ということを全編かけて全力で子どもに教えてくれようとしています。
これから思春期を迎え、未熟な人間関係に巻き込まれていくであろう子どもたちに、読ませておかなくてはいけない作品だと思いました。
そしてこの作品が言っていることを理解して信じてくれるといいなと思います。
最後の章では、「きみ」と語りかける人物が明らかになります。
登場人物全員が一堂に会する形のフィナーレ的なエピローグなのですが、ちょっときれいにまとめすぎていて現実感がないというか、わたしとしてはなくても良かったかなと思ってしまいました。
でも映画にするとしたらいい感じだなと思っていたら、2008年に石橋杏奈さん主演で映画化されていました。
本棚にそっと置いておいて、子どもに何度でも読んで欲しい本です。
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