吉野万理子『時速47メートルの疾走 』は
- 日大二中・広尾学園中(2016年)
- 海城中(2015年)
に出題されました。
日大二中と海城では、恋の芽生えの部分が使われたようです。入試に恋バナとは!
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あらすじ
中学3年生の秋。
運動会の翌日、最下位だった緑組の応援団長・ヒラマチが罰ゲームとして逆立ちでグラウンド200メートルを一周することになった。
誰も立候補者がいなかった応援団長決めで、クラス委員長としてジャンケンの提案をすることで間接的にヒラマチの団長決定に関わった伊集院慶一。(『立ちすくむ人』)
ジャンケンでチョキばかり出して負けそうになりながら、ヒラマチに助けられた蓮見美鈴。(『見守る人』)
青組応援団長であり、罰ゲームの言い出しっぺである大門勝也。(『見守りたくなかった人』)
地味に目立たないように過ごしてきたのに応援団長になってしまい、その上罰ゲームまでやらされることになった町平直司。(『疾走する人』)
「逆立ち一周」という罰ゲームに関わった4人の背景、そしてそれぞれの葛藤と成長を描いています。
作者について
吉野万理子さんは、1970年神奈川県出身の小説家・脚本家です。
児童文学での受賞歴多数。作品はほかに『チームひとり』『劇団6年2組』など。
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感想
小学生が読むには大人っぽい本が続いていましたが、これは大丈夫(笑)。爽やかな作品です。
表紙とタイトルから陸上部の話かと思いましたが、よく考えると時速47メートルって陸上競技の速さじゃないですね。罰ゲームで、逆立ちで4時間かけて200メートルを疾走するお話です。
過酷な罰ゲームということでなんとなくいじめ臭がただよいますが、そういう話ではありません。
いじめ臭なくむしろ爽やかなのは、逆立ちをする町平が応援団長も罰ゲームもしなやかに受け入れる骨のある男だからです。
大門も決していじめっ子の不良ではありません。
作品全体を通して悪人はひとりも出てこない、きちんと良心を持った登場人物たちによる群像劇なのです。
ひとりひとりがきちんと自分と向き合い、自分も人も傷つけることを恐れて悩みながら進んで行く物語なので、ラストも爽やかなハッピーエンド。
中学3年生でこれくらい理性的であってくれると親としてありがたいですが・・実際はこういう出来た子ばかりでないので厄介なのでしょうね。
逆立ちでのグラウンド一周は決して『疾走』ではないのですが、それでも『疾走』という表現がしっくりきます。
読後感のとても良い作品でした(*^^*)。
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