『娘に語る人種差別』
日テレの『ザ・世界仰天ニュース』が大好きな長女は、先日も「9.11アメリカ同時多発テロ事件」についての特集を熱心に見ていました。
「なにこれ、怖ーい!」「ひどいことするね。」というのが子どもの持つ普通の感想です。
テロの犯人はイスラム原理主義者で、たくさんの人が亡くなってたしかに恐ろしいひどいことです。
でも、イスラム教の人々が長い間、白人のキリスト教徒から差別を受けてきたことがその背景にあることを子どもは知りません。
世界には人種差別がはびこっていて、たくさんの事件や問題の原因になっています。
『娘に語る人種差別』は、世界の出来事に目が向き始めた子どもがどこかで間違った知識を得てしまう前に、そもそも人種差別とは何たるかをわかりやすく教えてくれる本です。
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著者はモロッコ系フランス人
モロッコはアフリカ北西部に位置する国です。
かつてフランスの植民地だった関係で、フランスへの移民が多くいます。
著者のタハール・ベン・ジェルーンも、専制政治から逃れるために故郷のフェズからフランスに移民しました。
多くのアフリカ系ヨーロッパ人と同じように、『フランスのアラブ人』であるモロッコ人も歓迎されない存在です。
フランスでの受賞歴もある著名な詩人・小説家である著者には差別についての著書がいくつかあります。
なかでも『娘に語る人種差別』は実の娘メリエム(10歳)との対話形式で書かれているため、子どもでもすんなり読めると思います。
『人種(ラス)』の科学的根拠は存在しない
白人・黒人・黄色人種というのは、わたしの世代では小さなころから当たり前のように使ってきた人間の分類の仕方です。
しかし、3つの肌の色の違いによる分け方に科学的な根拠はまったくなく、むしろその差異は社会的・文化的なものなのです。
『人種』という言葉は、差別を煽る人々に故意に使われ過ぎたためにその言葉自体が象徴のようになってしまっているので、使わないようにするのが最近の考え方の主流になっているそうです。
古い人間である親世代が、使わないようにしないといけませんね!
ではなぜ差別が起きるのか?
本書では、人種差別は恐怖と無知と愚かさから起こると断言しています。
自分の仕事を奪われるかもしれない。家を、家族を奪われるかもしれない。
同じ心を持った人間であることをわすれて怖がったり攻撃したりすることです。
そしてそれが、悪意のある人によって利用されてしまいます。
メリエム「人種差別主義者って、馬鹿なのね!」著者「その言葉じゃ弱いけど、かなり正しいよ。」(本書より引用)
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教育と、意志の力で
では、どうすれば差別はなくなるのでしょうか。
本書では、人種差別の考え方が間違っていることを徹底的に子どもたちに教育することだと言っています。
「〇〇人ってこうだから」のようなよく使われるボキャブラリーをなくしていかなければならない。
強い心で、小さな差別を見過ごしてはならない。
フランスでは、この本は発売と同時にベストセラーになったそうです。
それだけ、人種差別が身近で深刻な問題だということですね。
日本も、少しづつですが移民の受け入れが進んでいます。
これからの子どもたちには、差別などという思考はナンセンスなのです。
子どもたちは・・
イスラム系のお友達は身の回りにいないのですが、長女の小学校でも塾でも、中国人・韓国人のお友達はいるようです。
名前がちがったり、日本語が話せなかったりするので外国人だということはわかるようですが、日本人の子と同じように仲良くしています。
子どもの人種差別主義者(ラシスト)はいないというのは、本当のことだと思います。
子どもに差別的な考え方を植え付けてしまうのは、わたしたち大人です。
長女がもう少し大人になり、差別的な出来事に出会ったときに、この本のことを思い出して「その考えは間違っているな。」と気付くように育ってくれたらと思います(*^^*)。
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