作品について
『犬が来る病院 命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと』(大塚敦子)は2017年の読書感想文課題図書(高校生向け)になっていた本です。
日本で初めて小児病棟にセラピー犬を導入した聖路加国際病院を取材した、ノンフィクション作品です。
子どもは物語の本が好きですよね。ノンフィクションはなかなか読んでくれません。
でも、犬の絵の表紙に惹かれてこの本を読み始めた小4の長女は、翌朝泣きはらした目をしていました。
「ママも読んでみて。」というので、泣いても大丈夫なように家の中で読みました。
あらすじ
小児病棟には、白血病などで長期入院している子どもたちが大勢います。
聖路加国際病院では、そんな子どもたちにも、病気と闘うだけの毎日ではなくできるだけ子どもらしい生活をしてほしいと、たくさんの試みがなされています。
そのひとつが、セラピー犬です。犬と触れ合い顔を輝かせる子どもたち。
でも、実はこの本、犬が出てくるのは最初の1、2章のみ。
そのほとんどのページは、闘病する子どもたちとその家族の記録です。
登場するおもな子どもたち4人のうち、2人は無事退院できましたが2人は亡くなりました。
命に関わる病気と闘いながらも笑顔と優しさを失わない子どもたちの姿を、写真を交えながら克明に記録しています。
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感想
この作品の著者は、アメリカのエイズ患者やがん患者の在宅ホスピスなど死と向き合う人々をテーマに取材してきた人です。
しかしある時、幼い娘たちを残してがんで亡くなった若い父親の取材後バーンアウトしてしまい、しばらくそのようなテーマを避けていたそうです。
この聖路加国際病院の取材も、セラピー犬と子どもたちの関わりだけに焦点をしぼっていれば本当につらい部分は見なくても済むと思って始めたようですが、取材を始めるとまったくそのようなわけにはいかなくなってしまったようです。
結果、3年半もの間小児病棟で子どもたちとその家族に寄り添い、取材を続けることになります。
読んでいて、つらいけれども目が離せなくなる著者の気持ちがわかりました。
『ままはときどきごめんねというけど、それはちぃちゃんがいうことだから、いわなくていいんだよ』
子どもたちは、痛くて苦しい治療に耐えながら、どうして明るさと優しさを失わずにいられるのでしょうか。
「子どもの方が強い。」そう思いました。
子どもは純粋なぶん、病気という試練に真正面から立ち向かい、周りの大人もそれをしっかりと支えてくれるので、短期間でものすごく成長して強くなってしまう。
その姿に圧倒されるから、見守り続けてしまうんだと思いました。
子どもは本当にきれいな心で、本当に自分の親が大好き。
それは、病気よりも、ひょっとしたら自分の命よりも先に来る気持ちなのかもしれません。
そんな子どもの健気さと強さに、心を打たれる作品でした。
話は変わりますが、長女はこの作品を機に「ノンフィクション作品」いわゆる"説明文"的な本を読むようになりました。
ミステリーやファンタジーもいいけれど、時には「現実」の重みをかみしめて欲しいですね(*^^*)。
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この作品は、もともとこの絵本を出版するために取材した内容がもとになっています。
わたしの病院、犬がくるの (いのちのえほん) [ 大塚敦子 ]
『いのちのえほん』シリーズについてはこちら。
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