Amazonプライムで、ドラマシリーズ『地下鉄道 自由への旅路』を観ています。
原作は2016年のコルソン・ホワイトヘッド(米)の小説『地下鉄道』で、この本はベストセラーとなりピューリッツァー賞や全米図書賞を受賞しています。
1900年代前半、アメリカが奴隷州と自由州に分かれていた時代。
南部ジョージアの奴隷少女コーラが、北部やカナダに逃亡するためのルートである地下鉄道を通って旅するお話です。
民家の地下に鉄道の駅があり、列車に乗って移動するという一見ファンタジーな設定。
しかし『地下鉄道』という奴隷制度に反対する組織は実在のもので、実際には鉄道ではなく隠れ家や移動手段を用意して黒人奴隷が逃亡する手助けをしていました。
組織の名称を逆手にとって、タイトル自体が比喩なんですよね。
内容はまったくファンタジーでないし、シンドラーのリストみたいな感動物でもなく、重いテーマをシリアスに描いた作品です。
まず、奴隷が非人道的に扱われる描写が、これまで見たことがないくらいに残酷です。
そして、
親切なふりをして、黒人を管理し、緩やかに滅ぼそうとする白人。
保身を望みながら、黒人を見捨てることができない消極的な協力者。
生まれながらに冷酷な逃亡奴隷ハンター。
白人側にもいろいろな人物がいます。
捕まってしまった逃亡奴隷ジャスパーという人物が、5話で登場するのですが、食事をとらず、歌ったり祈ったりして、やがて衰弱して死んでしまうのですよね。
自らの尊厳のために、命さえも惜しまない覚悟を前にして、暴力は無力だということを描いた静かな回でした。
10話中、5話まで観たところです。
エンタメ感はまったくなく、むしろ哲学的ですらあります。
2016年の作品なのに、まるでその時代を生きた人が書いたかのような、不思議な物語です。