吉野源三郎『君たちはどう生きるか』のマンガ版が出版されて話題になっています。もう100万部も売れたそうです。
わが家には、わたしが買った小説版と、わたしの母が長女に買ってくれたマンガ版の2冊の『君たちはどう生きるか』があります。
どちらも読んでみた感想を書きたいと思います。
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懐かしい本
わたしにとって『君たちはどう生きるか』はとても懐かしい本でした。
わたしが日能研に通っていたころ、国語の読解問題でよく使われていたのです。
コペル君!という呼びかけがかなり強く印象に残っていましたが、はっきり言って内容は難解でよくわからないと思っていました。
大人になって読んでみて、こんなにわかりやすく、大切なことを伝えている本だったということに驚いています。
あらすじ
15才の本田潤一という少年が主人公です。裕福な家庭に育ち、成績は優秀だけどいたずら好き。2年前に父親を亡くして、母親の弟の「おじさん」と仲良しです。
人間は小さな分子
おじさんと銀座のデパートの屋上から地上を見下ろしていたときに、小さく見える人々の流れを水の分子のようだと思ったコペル君。
自分も含めて人はみな小さな分子であり全体で大きな流れをつくっていることに気付いたことは、地動説から天動説にかわったのと同じような大発見だということで、コペルニクスのあだ名をつけてもらいました。
自分中心の天動説ではなく、自分を世の中の一部だと認識したことを忘れて欲しくないというおじさんの思いがこめられたあだ名です。
貧乏
クラスメイトの浦川君は貧乏な豆腐屋の息子で、いつも弁当のおかずが油揚げなのでいじめられています。
しばらく学校を休んでいる浦川君の家を訪ねてみると、お金の工面に出かけている父親の代わりにお店で働いている浦川君がいました。
自分がいつも食べている食べ物も洋服も鉛筆も、数え切れないほどたくさんの人が関わって作られ、運ばれてきている。
コペル君は、物流のしくみと物を作りだす仕事の尊さを知ります。
ナポレオン
浦川君をかばったことで、上級生に目を付けられるコペル君たち。ナポレオンのように強くなりたいと憧れるようになります。
たしかにナポレオンはすごい偉人だけれども、ナポレオンは歴史上で世の中のためにいったいなにをしたのか?
どんな良いことをしてどんな悪いことをしたのか、どちらも歴史であることにかわりはありません。でもそれを分析してその影響を考えるという歴史の見方を、コペル君は学びます。
いじめ
いざという時は必ず全員で立ち向かうと誓ったのに、ひとりだけ怖気づき逃げてしまったコペル君。
そのことを悔やんで学校に行けなくなってしまいます。
正しいと思うことができなかったときに後悔するのは人間だけ。正しくありたいと思うこと自体がもう立派なことだとおじさんは教えてくれました。
何度失敗しても、僕たちは自分の意志でやり直すことができるーー。
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小説とマンガの違い
冒頭部分
一番大きな違いは冒頭部分です。
小説ではコペル君の紹介とデパート屋上のシーンからですが、マンガではいきなり、何かを悔やみ寝込んで泣いているシーンから始まります。
読んでいて「え?こんなに泣いているなんてどうしたんだろう??」と興味をそそるので、上手い書き出しになっていると思います。
おじさんのノート
要所要所に出てくるおじさんのノートの部分。なにかに気づいたコペル君に向けて熱く語りかける文章ですが、これはマンガ版でも原文のまま掲載されています。
わたしが日能研で読んでいて難解だと感じたのはおそらくこのノートの部分だと思いますが、そこにいくまでの過程がマンガでわかりやすく描かれているので文章でもすんなり入っていけます。
おじさんの熱い言葉に、涙が止まりません。
感想
大事件が起きるわけではありません。
15歳の少年の日常の中にある発見や悩みを通じて、人として世の中に生きていくことを教えてくれます。
「人として立派になって欲しい」というお父さんの願いは、偉業を成し遂げて欲しいということではありません。
自分の等身大の『立派さ』とは何かを考えさせられました。
時代背景が80年も前の話なのに、そんなことは全く感じずに心を打たれました。
「人としてどう生きるか」というテーマに時代は関係ないのですね。
小学生には難しいテーマなので、マンガだとわかりやすくなっているとはいえ、子どもが読んですぐ感動するものではないかもしれません。
でもわたしのように、「なにか大切なことを言っていたような気がする」という記憶が残って、大きくなった時に読み返してくれたらいいなと思います(*^^*)。
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