長女の読書
娯楽色満載のラノベばかり読んでいた長女ですが、最近は軌道修正して真面目な本を読ませるようにしています。
毎日新聞社の『全国読書感想文コンクール課題図書』の歴代リストを参考に選んでいます。
課題図書に選ばれるくらいですから、子どもにとって良い本ということはお墨付きだし、読み物としてもどれもおもしろいのでちゃんと読んでいるようです。
小学校高学年以降の課題図書になると、社会問題や歴史・戦争などを題材にした本が多く選ばれていて、単なる読書以上の勉強になることがわかりました。
テキストや教科書にさらっと載っていてもなかなか頭に入るものではありませんが、心で感じたことは忘れないはず。
読書を通じて、社会や理科の知識も吸収できたらと思っています。
『よかたい先生』はどんなお話?
『よかたい先生 水俣から世界を見続けた医師ー原田正純』は、2014年小学校中学年向けの課題図書です。
タイトルからわかるように、四大公害病のひとつ「水俣病」を題材にしたお話です。
社会科の授業では、公害問題は5年生の「わたしたちの生活と環境」という単元で勉強します。
中学年だと未習だし、字も(中学年向けにしては)小さめなので、高学年向けでもいいんじゃないかな?と思うような内容です。
でも、医者である原田先生の生の言葉で語られる文章は易しく、中学年でも十分十分理解できそうです。
良心に正直に生きた人
水俣病患者の症状、不自由な体を見たとき、人として同情するのは当然の気持ちです。
原田先生も、何の罪もない人が健康も仕事も奪われ、名誉まで傷つけられているのを知って衝撃を受けました。
原田先生がすごいのは、その気持ちを自分の生活と切り離さず、公害に苦しむ人々に寄り添い続けたことだと思います。
原田先生は幼少期、味方だと信じさせられてきた軍人に裏切られ、一方で他人の大人に助けられた経験がありました。
大きな力は信用できない。でもひとりひとりの大人は悪い人ばかりではない。
子ども心にそう刻み込まれたことが、先生の人生を動かしていったように思います。
原田先生は、患者の味方ばかりしすぎだと批判されることもありました。
「公平というのは立場が対等な場合に使うことばであって、片方が明らかに弱いときには、そちらの味方をしなければ公平とは言えない。」
原田先生の言葉は、きちんと心の目で見て、心で考えている言葉だと思いました。
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公害と貧困と差別
原田先生は、日本だけでなく世界中で起きている公害の現場にも足を運んでいます。
さまざまな公害に関わる中で原田先生が気付いたことは、公害被害に遭ったから貧困になり差別を受けるのではなく、もともと貧困で差別されていたところに公害が起きるということです。
貧しいから教育を受けられず。字が読めないから危険な食品に気づかず食べて病気になってしまった人。
有害だとわかっていても、他に行くところも食べるものもなく、未来がないことを承知でいまを生きるしかない人々。
もともと貧しい地域に大きな工場を建て、人々に仕事を与えることで力関係ができてしまうから、なにかあっても文句が言えない。
お金ばかりを大切にして、弱者をないがしろにするような社会になっていることを原田先生は危惧しています。
この国は成長していない
日本は高度経済成長期に、水俣病をはじめたくさんの公害事件を起こし、被害者を出してしまいました。
なのに、福島第一原子力発電所の水素爆発のことがあり、また海水を汚すようなことをしています。
「やりたいことは、全部はできんね。」と言って亡くなっていった原田先生。
公害問題は解決していないし、これからも取り組んで行かなければならない問題です。
子どもたちの心に、原田先生の言葉が残ればいいなと思います。
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